Wednesday, December 24, 2008

アサヒカメラ、今日の写真2009

『アサヒカメラ』誌上で2009年1月号から連載「今日の写真2009」が始まりました(215-219頁)。ホンマタカシさんと私がレギュラーで、毎回ゲストをお呼びして近刊の写真集や開催中の写真展を中心に批評する鼎談です。第一回目のゲストは作家の堀江敏幸さんです。周縁にあるものを見逃さないで眺めている堀江さん独特のまなざしが、この鼎談にも表れてきていてさすがだと思いました。かなり長時間にわたって話したので、構成のタカザワケンジさんは大変そうでした。

Tuesday, December 9, 2008

The Far East +Mark Rothko+Mt. Fuji

前に書いたもので、この年の瀬に刊行された3篇を紹介します。

・「アートとドキュメンタリーの交叉−『ファー・イースト』の写真再考」、『鹿島美術研究 年報第25号別冊』、2008年11月、302-311頁
*2007年度鹿島美術財団の助成を得た研究報告として、明治初年に横浜で刊行された先駆的な写真雑誌について書いた論文です。この限定部数の論文集『鹿島美術研究』は例年、来年3月までに国内の主要美術館等に寄贈・配布されるとのこと。
http://www.kfa.or.jp/

・「経験の確率−ロスコ・チャペル・ペインティングを見る」、『文学空間』Vol.5. No.5、2008年12月、7-15頁
*ヒューストンにあるロスコ・チャペルを再三訪れた時の記憶を手がかりに書きました。来年は後期ロスコに焦点を当てた展覧会が川村記念美術館に巡回しますが、とても楽しみです。
http://www.rothkochapel.org/
http://www.tate.org.uk/modern/exhibitions/markrothko/default.shtm
http://kawamura-museum.dic.co.jp/news/20080822_1.html

・石川直樹『Mt. Fuji』書評、『スタジオボイス』2009年1月号、95頁
*この写真集のことを書いているとき、中学のとき学校行事で登った北アルプスの燕岳が懐かしく思い出されました。『エスクァイア』12月号は登山特集で、ホンマタカシさんが加瀬亮さんと北穂高に登ってたし。新しい山岳写真ブームの到来か。
http://www.straightree.com/
http://www.enzanso.co.jp/

Friday, November 28, 2008

ダンシング・ヴードゥー ハイチを彩る精霊たち 佐藤文則写真展

DC系の同僚、管啓次郎さんと管研究室の宇野澤くんの尽力で下記の写真展が開催されますので、ぜひご覧下さい。

                 記

ダンシング・ヴードゥー ハイチを彩る精霊たち 佐藤文則写真展

 フォト・ジャーナリスト佐藤文則氏の写真展を開催します。佐藤氏は過去20年にわたってハイチの人々の生活と政治状況の取材を重ねてきました。
 「世界最初の黒人共和国」「西半球で最も貧しい国」として知られるハイチ。佐藤氏の写真には、ハイチの人々の過酷な生活が克明に写し撮られています。強烈な衝撃を受けます。未知の土地に対しての想像が爆発的に広がります。
 ハイチの歴史や文化、人々の生活を考える上で欠かすことができないのが民間信仰のヴードゥーです。つねに空腹の生活、展望の見えない政治状況、そんな劣悪な環境でもハイチの人々はたくましく生きています。彼らが信じているヴードゥーとはどのようなものなのでしょうか。
 本展では、佐藤氏の20年におよぶ取材によって撮影された写真の中から、ハイチにおけるヴードゥーをテーマに選んだ約30点の写真を展示いたします。あわせて佐藤氏が所蔵する旗や瓶などのヴードゥー・アートも展示します。ぜひ、ご覧ください。

■会期2008年12月2日(火)~2009年1月9日(金)
※ただし12月28日(日)~1月4日(日)は休館。

■時間 平日8:30~19:00 土8:30~18:30 日祝10:00~16:30
※ただし12月23日(火)~27日(土)と1月5日(月)~7日(水)は10:00~16:30

■会場 明治大学生田図書館 Gallery ZERO
(小田急線生田駅下車南口徒歩約10分)
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/ikuta/access.html
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/ikuta/campus.html

■主催 明治大学大学院新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系

※一般の方もご来場いただけます。図書館入口ゲート前の呼出しボタンにて係りをお呼びください。

佐藤文則<略歴>
フォト・ジャーナリスト。明治大学文学部卒業後、1979年に渡米し、San Francisco City Collegeで写真を学ぶ。フォトエージェンシーの「Impact Visuals」(New York)、「Sipa Press」を経て、現在「OnAsia Images」(Bangkok)に所属。1988年からハイチ取材を開始。他に米国、東南アジア諸国を中心に活動する。日本ビジュアルジャーナリスト協会(JVJA)会員。
著書に『ハイチ 目覚めたカリブの黒人共和国』(凱風社)、『ダンシング・ヴードゥー ハイチを彩る精霊たち』(凱風社)などがある。

Sunday, November 23, 2008

執筆したもの3件

少し前に書いた文章が活字になってきましたので、紹介します。

□「写真史へのコメント』、『国立美術館所蔵による 20世紀の写真展図録』千葉市美術館、2008年、8-13頁
展覧会は12月14日(土)まで開催中です。
http://www.ccma-net.jp/exhibition_01.html

□「旅愁と郷愁」、『Miyako Ishiuchi: One Days』Rat Hole Gallery、2008年(和英)
日常や旅先で写したスナップによる写真集。石内都の大規模な回顧展「ひろしま/ヨコスカ」が来年1月11日(日)まで、目黒区美術館で開催中です。
http://www.mmat.jp/

□野澤一興写真集『他日、The Other Day』書評、『図書新聞』2008年11月22日号
前半に吉増剛造の代表的詩篇「絵馬、a thousand step and more」を全て引用した問題作。

Wednesday, November 19, 2008

ARICA公演「No Exit」のお知らせ

今週末の11月21日(金)、横浜のBankART Miniで、私たちARICAが「BankARTCafe Live」シリーズに登場します。開演は20:00から。料金1500円。Cafeの中二階のような奇妙なスペースを利用したパフォーマンスです。リハーサルを目撃したところによると、イノシシを抱えた女が登場するのですが、空中に5センチほど浮かんでいる。それからたぶん自分のからだの部分(手、足)を使って、いまいる空間の距離を測定する。ぜひご覧下さい。http://www.bankart1929.com/

Thursday, November 6, 2008

近藤一弥さんを迎えて

BOOK246×明治大学DC系 連続トークセッション
見えるもの聞こえるもの ― What We See, What We Hear

第2回 近藤一弥 × 倉石信乃 × 管啓次郎「いま、デザインとは何か」

美術展ポスターから文学全集まで、幅広いデザイン活動を展開する近藤一弥さんを迎え、デザインの可能性を探ります。
当日は近藤さんのデザインした書籍を店内に展示し、もちろん一部は購入していただける予定です。

近藤一弥 kazuya Kondo:グラフィックデザイナー、アーティスト。
www.kazuyakondo.com
倉石信乃 Shino Kuraishi:批評家、詩人。明治大学DC系准教授。
管啓次郎 Keijiro Suga:翻訳者、エッセイスト。明治大学DC系教授。

2008年11月15日(土)18:00~20:00
会場:BOOK246店内 入場料:500円 定員:30名(要予約)
予約・問合せ先:03- 5771- 6899(BOOK246)/info@book246.com

BOOK246
〒107-0062 東京都港区南青山1-2-6 Lattice青山 www.book246.com
東京メトロ半蔵門線・銀座線、都営大江戸線「青山一丁目」駅より徒歩1分

Friday, October 24, 2008

第11回ディジタルコンテンツ学研究会のお知らせ

このたび、第11回ディジタルコンテンツ学研究会では、オランダ アムステルダムに拠点を置く電子音楽センターSTEIMの水田拓郎氏が帰国されている期間に明治大学で講演・ライブをしていただくことになりました。これまでの活動、音楽やその演奏のためのインタフェース開発についての姿勢について講演いただくとともに、ライブ演奏もいただく予定となっております。

日 時:10月27日(月)18時00分〜19時30分
場 所:生田キャンパス 中央校舎6階 メディアスタジオ
明治大学 生田キャンパス アクセスマップ
http://www.meiji.ac.jp/koho/campus_guide/ikuta/access.html
ゲスト:水田拓郎
ホスト:明治大学理工学部情報科学科 宮下芳明 専任講師

水田拓郎 プロフィール:
1978年生まれ。1995年よりDJとしてアンダーグラウンド電子音楽シーンで活動する一方、smash TV productionsを組織してジャンルを超えたイベントを東京各所で開催。2001年慶應義塾大学文学部美学美術史学科卒業、同年に研究員として熊倉敬聡、芹沢高志らとともに学術フロンティア・インターキャンパスプロジェクトの立ち上げに関わる。2004年ニューヨーク大学インタラクティヴ・テレコミュニケーションズ(ITP)学科でTom Igoe、Eric Singerの師事のもとフィジカル・コンピューティング修士課程修了。翌年に文化庁新進芸術家海外派遣制度のもとオランダ・デンハーグのソノロジー・インステュートとアムステルダムのSTEIM電子音楽楽器スタジオに在籍する。近年はSTEIMのアーティスティックディレクターとしてリサーチ、キュリエーション、アーティストレジデンシープログラムのディレクションを任される。ユニークな演奏ツールを製作/使用しながら、楽器としてのターンテーブルの独自性を追求し精抑楽器としてのターンテーブルの独自性を追求し、精力的にライブ活動を行っている。
(参考) http://www.djsniff.com

Friday, October 10, 2008

トヨダヒトシ・スライドショー 10月24日(金) 明治大学和泉キャンパス

Visual Diary / Slide Show
Hitoshi Toyoda
『NAZUNA』/『spoonfulriver』

「闇に挟まれながらスクリーンに現れる"像"は
 手を伸ばしても掴むことは出来ず、
 日々の中での失敗やよろこびのように、
 やがて時間に押し流されて消えていく」

ニューヨークを生活と活動の拠点に、
何も跡を残さない"スライドショー"というスタイルにこだわって、
映像日記を発表している写真家、トヨダヒトシ。

今回は歴史を重ねた急勾配の階段教室が会場となります。
場の記憶が濃密に漂うこの空間に、大きなスクリーンを設置し、
つながりのある2作品を上映します。

■2008年10月24日 (金)
■開場
17時30分
■上映
18時00分 - 19時30分 /『NAZUNA』
20時00分 - 21時20分 /『spoonfulriver』
■入場
無料
(入れ替え制)
(各回とも席に限りがありますので、お早めのご来場をおすすめします)
■会場 
明治大学和泉キャンパス第2校舎3番教室
〒168-8555 東京都杉並区永福1-9-1
(京王線・井の頭線 明大前駅下車 徒歩3分)

■上映作品

『NAZUNA』(2005 version/90min./silent)

9.11.01/うろたえたNY/11年振りの秋の東京を訪れた/
日本のアーミッシュの村へ/アフガニスタンへの空爆は続く/
ただ、/やがて来た春/長くなる滞在/
写真に撮ったこと、撮れなかったこと、撮らなかったこと/
東京/秋/雨/見続けること

ー ある夏の、雨のブルックリンから始まる1年数ヶ月の日々を綴った
  長編スライドショー

『spoonfulriver』(2008 version/80min./silent)

2005年春先の、ニューヨークの平凡な道から始まる/このありふれた日/
いくつかの旅をした/出雲崎/コペンハーゲン/グラーツ/残された言葉/
今も/東京/水のように/思いを遂げることと
幸せになることは同じではないのかもしれない/
集めた光/去ってゆく音/ニューヨーク/ひと匙の河

ー 500枚の写真からなる近作映像日記

■主催:明治大学大学院ディジタルコンテンツ系
    トヨダヒトシスライドショー実行委員会
■トヨダヒトシ Website:http://www.hitoshitoyoda.com/
■お問い合わせ:実行委員会代表 伊藤 貴弘
Tel : 090-9292-8513
Website : http://www.dc-meiji.jp/
Mail : toyoda.hitoshi.dc.2008@gmail.com

Saturday, September 27, 2008

開港5都市モボ・モガを探せ!

内藤廣氏設計によるみなとみらい線馬車道駅の面白いコンコースで、「開港5都市モボ・モガを探せ!横浜展」が開催中(11月30日まで)。昨日9月26日(金)、主催者であるBankARTの新しくできたスペースBankART Miniで記念シンポジウムがあった。通常のNYKは横浜トリエンナーレで使用中で、Miniは同じ建物の未使用だった一部を改装したもの。Miniじゃなくわりと広い。

パネリストは、津田基(はこだてフォトアーカイブス)、丹治嘉彦(新潟大学)、森下明彦(神戸芸術工科大学)、藤城薫(写真家/長崎)各氏と私、司会はBankART1929の渡邊曜さん。一般家庭に保管されている大正から昭和の戦前期頃までに至るモダンな肖像や風景・風物の写真を発掘し、保存・展示していこうとプロジェクトが横浜のBankARTで始まり、昨年あたりから函館、新潟、神戸、長崎へと展開したもの。私以外の他のパネリストの方々は、実際にこのプロジェクトを進めている当事者だった。私は横浜と写真の関わりや、近年注目されるアノニマスなスナップショットの意味について少し話した。参加者の多くが、見出された写真を人と出会い、ネットワークを築くための情報の「核」のように捉えていた点が印象的だった。各都市で開催される展覧会の期限を超えて継続されるというこのプロジェクトが、従来にないネットワークの拡がりと、「中央」からではなく各都市からの発進力を強化するものへ発展していくと面白い。

Tuesday, September 23, 2008

彼女のワンピース

いま書店に並びつつある写真批評誌『写真空間2』(特集 写真の最前線)に、「彼女のワンピース−被爆資料と写真の現在」という文章を寄稿しました(110-124頁)。土門拳以後今日に至る、原爆に関する写真史の一端を考察したものです。機会があれば手にとって読んでみて下さい。
http://www.seikyusha.co.jp/books/ISBN978-4-7872-7250-8.html

KIOSK、ニューヨーク/東京

9月18-20日、私たちのパフォーマンス・カンパニーARICAが、ニューヨークのジャパン・ソサエティの招聘公演「KIOSK」を行なった。リハーサルと初日公演を見るため私もニューヨークへ。コトバとコンセプトを担当しているのだが、通常の字幕を投影する形ではなく、コトバのプロジェクションとオフの英語の声を演出上、ドラマの中に組み込んでいた。演出家の藤田康城による工夫だ。一足先に帰国したので、詳しい反響を知るには至らなかったが、その都市空間に微妙に適合したような感触を得た。
http://www.japansociety.org/event_detail?eid=365e7066

「キオスク・リストラ」と称する、ニューヨーク・ヴァージョンをさらに改訂した公演を、10月9日(木)・10日(金)・11日(土)・12日(日)の4日間、東京・中野のテルプシコールで行ないます。ぜひ見に来ていただければ幸いです。詳しくは以下のARICAのホームページをご覧下さい。
http://www.aricatheatercompany.com/j/top.html

Monday, August 18, 2008

DOG+TOWN

8月7日、横浜から多摩へ引っ越しをする。引っ越しのあいだ、西山英彰のとてもノスタルジックな写真集『触れない光 Yokohama・Yokosuka1994-95』を見つけた。よく知っている近所の風景の細部が含まれているという、ただその理由のために執着してしまう。久保山のバス停を降りて三春台への階段を上がる途中の煉瓦壁に白く書かれた落書きの写真のことだ。「O」を共有して十字形にDOGとTOWNが交叉する。それは20数年間見つづけてきたが全然消えなかった。

夏の旅2 札幌

8月11-12日、久しぶりに北海道へ行った。露口啓二さんの写真展(8月11-18日)を見に行き、トーク・イベントに参加するため。このメイン・イベントの前後に、北大付属図書館北方資料室、旧札幌神社(北海道神宮)、イサムノグチ設計のモエレ沼公園、北海道立開拓記念館、北海道立文学館の吉増剛造展、北海道立近代美術館のレオナール・フジタ展をそれぞれ見た。ゼミ旅行を兼ねたので、DC系から北村昂陽、大塚真弓、伊藤貴弘(教養D)、そして1日目まで宇野澤昌樹がそれぞれ参加。充実した旅だった。
露口さんの写真展は、地名、ミズノチズ、On-沙流川という三つのシリーズによって構成された。いずれも北海道の歴史と現在を注意深く見つめようとする。対話の中で、露口さんがジャン=マルク・ビュスタモントへの関心について触れられたのが印象に残った。ビュスタモントは現代の風景を考える上では指標的なアーティストだが、中性的な距離を保つことが不可能な場所においてビュスタモント的な慎重な注視者であろうとすることの倒錯を、露口啓二は自覚的に生きようし、その矛盾を引き受けている、そのように考えたいと思った。このような貴重な機会を設け、素晴らしく巨大な印刷物『アフンルパル通信ex.1』を刊行した吉成秀夫さんに敬意を表したい。画像を大きく載せたいという純粋な欲求が常識的なポータビリティを凌駕している。そういうことが肝心だ。肝心なことが長く続いていきますように。ここには、DC系の管啓次郎さん、宇野澤くん、そして私も寄稿しています(「平坦な条里に抗して−露口啓二「ミズノチズ」について)。またこの展覧会の開催のきっかけを作って下さり(露口さんの仕事を吉成さんに紹介したのは吉増先生だった)、イベントの冒頭でわれわれを鼓舞するスピーチをして下さった吉増剛造先生に感謝を。展覧会についての詳細なレポートはまた以下をご覧下さい。

http://www.fremen.biz/contents/modules/blogt/
http://diary.camenosima.com/

夏の旅1 八戸

八戸市立美術館で開催中(〜24日)のICANOF第8回企画展「68-72*世界革命*展」に短い映像作品「TSUKAI」を出品した。須山悠里さんとの共同制作で、おそらく来年になると思うが、シアター・カンパニーARICAの新作公演のために書きつつある同名のテキストを映像と組み合わせたもの。現段階での完成版のテキストは、北海道の目覚ましい古書店「書肆吉成」の発行する『アフンルパル通信』第5号に掲載している。
7月25日(金)・26日(土)のオープニング・プログラムに参加し、68-72年をテーマとする、稲川方人、平倉圭、大島洋、絓(すが)秀実各氏のレクチャーを聴くことができた。いずれも充実した内容で時間が足りない ! 絓氏による近年の岡本太郎および70年万博再評価あるいは再考についての端的な批判に見られるように、この集いも展覧会もおよそ郷愁とはかけ離れたところで成立していたのが良かった。

Friday, July 18, 2008

ホンマタカシ『TOKYO』

アンセル・アダムス、バーバラ・モーガン、ドロシア・ラング、マイナー・ホワイト、ボーモント&ナンシー・ニューホールが設立した伝統ある出版社Apertureから、ホンマタカシ写真集『TOKYO』が刊行されました。この本について、『アサヒカメラ』8月号に書評を書きました(222頁)。フランス装風の小口をそろえない用紙やコンサバな雰囲気の表紙は、著者のアメリカ写真の伝統へのオマージュみたいに思えます。この10年のほどのホンマタカシさんの東京写真の推移もよく分かる写真集です。http://www.aperture.org/

吉野英理香「eleanor rigby」

吉野英理香さんの新作写真展「eleanor rigby」が、横浜市民ギャラリーあざみ野で7月20日(日)まで開催中です。これは写真展「錯綜する光 影 そして記憶」の一部を成すもので、東京総合写真専門学校の開校50周年を記念した事業の一つ。会場で配布されるパンフレットに吉野作品の解説を書きました。久しぶりの個展ですが、彼女の野性的なスナップショットをぜひ見て欲しいと思います。

錯綜する光 影 そして記憶
会場 : 横浜市民ギャラリーあざみ野
会期 : 7月15日(火)ー20日(日)
開館時間 : 10時ー19時(最終日のみ17時終了)

1階展示室 吉野英理香『eleanor rigby』 ※新作106点
2階展示室 小椋由子『途中』 ※フローニンゲンに鈴木清の展示を訪ねる旅の記録
      向野実千代 / 山田大輔 / 谷口雅
      写真であそぼーYouTube(プロジェクション)

詳しくは以下を参照してください。
http://pmn-s.com/utage/
http://www.yaf.or.jp/azamino/access/

Wednesday, July 16, 2008

7月13日のトークセッション

7月13日(日)Book246/Cafe246で行なったDC系の連続トークセッション、「見えるもの聞こえるもの」の第1回目「写真はいま何を考えているか」に来ていただいた大勢の方々に改めて御礼申し上げます。写真のプロジェクションが見づらかったり、とても会場が暑かったり・・・反省すべき課題もありました。

ゲストである北島敬三さんの率直なお話をうかがうことができて、主催者としてはありがたかったです。すでに確立した自分の表現の様式から離れることは勇気の要ることなので、1990年代に起こった北島さんの大きな変化には関心が尽きません。

Wednesday, July 9, 2008

≠!

大山宗哉くんによる謎めいたタイトルの個展「≠!」が、昨日7月8日(火)から明治大学生田図書館Gallery Zeroで始まった。大山くんはディジタルコンテンツ系の修士課程に属しながら、すでにメディア・アーティストとして活発に活動を展開している。きょうそのインタラクティヴな作品を体験してみたが、こちらのアクションに対するレスポンスがとても繊細な作品だと思う。これはぜひ体験して欲しい展覧会です。

この度、生田図書館のGallery ZEROにおきまして
理工学研究科 新領域創造専攻 ディジタルコンテンツ系に所属するメディアアーティスト、
大山宗哉さんの作品展示「≠!」を行います。

オリジナルのマルチタッチディスプレイを用い
手で映像に触れることができるインタラクティブな作品を展示致します。
視覚−聴覚−触覚という3つの感覚器による介入と反応を楽しみながら
お互いの感覚の関係性を考える契機となれば幸いです。

 ■期間 2008年7月8日(火)〜7月30日(水)
 ■時間 平日 8:30〜19:00 土 8:30〜18:30 日・祝日 10:00〜16:00
 ■場所 生田図書館 Gallery Zero
 ■リーフレット http://www.dc-meiji.jp/ohyama.pdf


大山 宗哉 <略歴>
1985年 生まれ。
2006年、大槻幸平とともに結成したvoice.zeroとして国内外のアーティストとのコラボレーションプロジェクトを開始。
同年、スペインのアーティスト Miguel Gil Tertre 氏とともに4作のビデオ作品を発表。
2007年、ソニーミュージックコミュニケーションズをはじめとする企業のインスタレーションを制作。
また、メディアアーティスト集団 TriponとともにMetamorphoseに出演, リアルタイム生成によるパフォーマンスを行う。
2008年、明治大学 大学院 理工学研究科 新領域創造専攻 ディジタルコンテンツ系に所属、
メディアアートを宮下芳明氏に師事。
東京芸術大学 公開講座 非常勤講師 (2008年−)。

Thursday, July 3, 2008

DC系進学相談会

7月2日(水)、駿河台校舎・リバティタワーで、ディジタルコンテンツ系の進学相談会を行なった。同系の専任、宮下芳明さん、管啓次郎さん、私がそれぞれスピーチをしたが、予想以上に多くの関心のある方々が学内外から集まってくれて良かった。改めてDC系について考えてみるいい機会にもなった。
7月13日(日)、東京青山Cafe246テラスでの北島敬三さんをゲストに招くトークショーもぜひ成功させたい。

合同ゼミ発表会

7月1日(火)、トーマス・ピンチョンとアメリカの環境・文学(ゴーストタウン、ゴールドラッシュ・・・)の専門家、波戸岡景太さんによるドキュメンタリー映画をつくるゼミと、シュルレアリスム文学の研究者にしてカリスマ仏語教師の清岡智比古さんによるフランス映画をみるゼミ、そして私の「写真集をつくる」ゼミがいっしょになって、合同で映像のプレゼンテーションを行なった。
波戸岡さん、清岡さん、そして私は、語学と体育と文系の教養科目を教える教員の集まった「総合文化教室」という組織に属している。そして週に1コマか2コマ、1、2年生に楽しくも厳しく?教養を身につけてもらう、教える側にとっても自由度の高い授業「総合文化ゼミナール」を担任している。去年後期からどうせなら一緒に発表会をやろうということになり、今回は、今年から着任された清岡さんも参加され、いっそうにぎやかな授業になった。
波戸岡ゼミは、学食2箇所と駅前の牛丼屋で、食事が出てくるまでの待ち時間を比較したたドキュメンタリーを出してきた。前回も学食が舞台だったが、今回の「学食へ行こう!2」はナンセンスなエンターテインメント性はそのままに、センセイの自ら担当する編集技術に磨きがかかっている。清岡ゼミは、ダリ+ブニュエルの古典的シュール映画「アンダルシアの犬」をテーマに、興味深い読解を施したシックな発表となった。そして我々のゼミのスライドショー形式の「うまくいえない」は、もやもやした感情をストレートにぶつけた、なかなか気持ちのいい作品になったと思う。建築学科1年の林くんが編集を引き受けてくれたことも嬉しかった。
清岡さんの毎回楽しいブログでも、この授業がレポートされている。http://tomo-524.blogspot.com/

Wednesday, June 25, 2008

HOMEI MIYASHITA: Performances in absentia

ディジタルコンテンツ系の同僚、宮下芳明さんの個展が開催中です。

HOMEI MIYASHITA: Performances in absentia
期間:2008年6月20日〜7月3日
場所:明治大学生田図書館 Gallery ZERO
時間:平日 8:30-19:00 土 8:30-18:30 日・祝 10:00-16:30 (※ 6/30 は 13:00-)

音楽と/映像の作品を「発明」していくかのような、メディア・アーティストとしての宮下さんの仕事にぜひ注目して下さい。
http://www.lib.meiji.ac.jp/news/
http://www.dc-meiji.jp/absentia.pdf

Sunday, June 22, 2008

『裸形の言ノ葉』と吉増剛造特別展

『週刊読書人』2008年6月27日号に書評「林浩平著『裸形の言ノ葉−吉増剛造を読む』」を書きました。この本は、詩人吉増剛造について書かれた単行本として嚆矢をなすものです。
林浩平さんのブログは次の通り。http://mignonbis.at.webry.info/

ちょうど吉増さんは2008年6月28日(土)〜8月31日(日)札幌の北海道立文学館で特別展「詩の黄金の庭 吉増剛造」が予定されていて、これはぜひ見に行くつもりです。http://www.h-bungaku.or.jp/gyouji/kikakuten.html  

フォト・プレミオ年度賞受賞写真展

コニカミノルタ主催の若手写真家を奨励する公募プロジェクト「フォト・プレミオ」のゲスト審査員を昨年度と今年度務めている。第9回・2007年度大賞と特別賞、その他の入賞者の受賞式が昨日行われた。大賞の小林知恵さん、特別賞の倉谷卓さん、朝海陽子さんによる年度賞受賞写真展が、6月20日(金)〜30日(月)新宿・コニカミノルタプラザで開催中で、展覧会に併せて刊行された『2007年度フォトプレミオ受賞作品集』(コニカミノルタフォト・プレミオ事務局)に「ダイスをころがせ−いま、じぶんの作品で個展を開こうとするきみに」を寄稿した(42-43頁)。
レギュラー審査員はいずれも写真家で、秋山亮二さん、長野重一さん、柳本尚規さん。彼ら写真界の大先輩から、審査の内外で教えられることも多い。1925年生まれの長野さんは、木村伊兵衛や名取洋之助と一緒に仕事をされ、市川昆監督の映画『東京オリンピック』で撮影を担当されるなど戦後の写真・映像の歴史とともに数々の重要な業績を残して来られた方なのだが、若い写真家の作品を実によく見ておられることにいつも驚かされる。私にとっては応募してくる作品を見ることはもちろん、長野さんをはじめ他の審査員の方々の反応を知ることもまた勉強になる。
フォト・プレミオではいまも作品を募集している。毎月約2名のペースで新宿・高野ビルという好立地のギャラリー「コニカミノルタプラザ」で個展開催が実現でき、さらにその中から年度賞受賞者が選定され、賞金(大賞100万円、特別賞50万円)も与えられる。詳しくはHPをご覧下さい。
http://konicaminolta.jp/plaza/premio/

Saturday, June 21, 2008

連続トークセッション@cafe246テラス

明治大学DC系の専任教員である管啓次郎さんと私で、連続トークセッションを企画しました。

南青山のカフェ/ブックス246で
連続トークセッション「見えるもの聞こえるもの」
(What We See, What We Hear)
を行います。※詳細は追ってお知らせします。

第1回ゲスト北島敬三「写真はいま何を考えているか」
 with 倉石信乃/管啓次郎
日時:7月13日(日)午後4時から6時まで
場所:カフェ/ブックス246 http://www.book246.com/

2008年春、明治大学に新しく開設された大学院プログラム「ディジタル
コンテンツ系」(略称DC系)。
映像に、音楽に、デザインに、思考に、批評のことばで風穴をあけてい
きます。
見えるものをどう見るのか、聞こえるものをどう聞くのか。


<北島敬三>  
写真家。1954年生まれ。1975-76年「WORK SHOP写真
学校」の森山大道教室で学ぶ。
1976年森山大道を中心に設立された自主運営ギャラリー「CAMP」
にメンバーとして参加。
1981年に日本写真協会新人賞、1983年に木村伊兵衛賞、
2007年に第32回伊奈信男賞を受賞。
現在は2001年に開設した自主運営ギャラリー
「photographers'gallery』を拠点として活動している。
主な写真集に『PORTRAITS+PLACES』『A.D.1991』
『NEW YORK』など。
DC系兼任講師。
http://www.pg-web.net/

<倉石信乃> 
詩人、批評家。写真史、 近現代美術、美術館論などを研究。
2007年まで横浜美術館学芸員として、
ロバート・フランク、中平卓馬、李禹煥などの企画展を担当してきた。
著書に『反写真論』、共著に『失楽園:風景表現の近代 1870-1945』
『カラー版 世界写真史』などがある。
DC系准教授。
http://fiatmodes.blogspot.com/

<管啓次郎> 
翻訳者、エッセイスト。比較詩学研究。
著書に『コロンブスの犬』『狼が連れだって走る月』
『トロピカル・ゴシップ』『コヨーテ読書』
『オムニフォン <世界の響き>の詩学』『ホ ノルル、ブラジル』がある。
最新の訳書はエイミー・ベンダー『わがままなやつら』。
DC系教授・主任。
http://monpaysnatal.blogspot.com/


明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系
修士課程学生募集中
入試情報は http://www.meiji.ac.jp/sst/grad/examination/


Thursday, June 19, 2008

SASAOKA Keiko 2001-2007

「SASAOKA Keiko 2001-2007」(東京・月島のTPC、www.tamada-pj.co.jp)を見る。3月の「VOCA」展出品、ついさきごろ開催された個展「水域」(東京・新宿のphotographers' gallery)の展示もそうだったが、笹岡啓子は今回もいっそう揺るぎない確信を得ているようだった。昨年沖縄市民ギャラリーでのグループ展に出品された問題作「The World After」は、トリプティックをディプティックに改組することで紛れもなく優れた作品となった。他にも過去の代表作が見事に再配置されている。スライドのプロジェクションによる広島に取材した「PARK CITY」も必見。6月27日まで。

DC系進学説明会

明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系(略称DC系)
進学説明会のお知らせ

日時:7月2日(水)16:30〜17:50
場所:明治大学駿河台キャンパス、リバティタワー9階1093教室
内容:DC系の専任教員(宮下芳明、管啓次郎、倉石信乃)がそれぞれ15分くらい話したあと、個別の相談に乗りたいと思います。

この説明会はちょうど第1期入試の出願期間(7月4日〜10日)直前に行われます。この機会にぜひお気軽にご参加下さい。
ちなみに第1期入試は8月1日(金)。われわれのDC系では学部時代の専攻は問いません。新しい何かを始めたい皆さんのチャレンジを待っています。入試情報の詳細は下記をご覧下さい。
http://www.meiji.ac.jp/sst/grad/examination/

Thursday, June 12, 2008

VACANT LAND 1989

昨年刊行された写真集の中で最も忘れがたいものは、浜昇『VACANT LAND 1989』(photographers' gallery刊)だ。もし見ていない方は、その途方もない重量をぜひ一度手に取って、およそ1000頁にもなる風景の1頁づつを繰る経験をして欲しいと思う。
このシリーズによる個展が昨日から始まった。以下は会場の銀座ニコンサロンのHPからの転載。

浜 昇展
[VACANT LAND 1989]
銀座ニコンサロン
6/11 (水)〜6/24 (火) 10:00〜19:00(最終日は16:00まで)
会期中無休

1985年の「プラザ合意」以後急速に膨れあがっていったバブル経済が1989年を頂点に崩壊する。本展はその前後3年にわたって東京の神田・四谷・新宿の「空地」を記録したものである。
狂乱する地価の高騰に乱舞するこの時代を「空地は写真である」と確信した作者は、地図を片手に、ひたすらてくてくと歩き定めた地域の全ての「空地」を撮影し、その場所を記録した。これらは『VACANT LAND 1989』として写真集にまとめ、刊行した。
お金(資本)のゲームに興じた時代も、その崩壊から20年余りが経ったいま、ノスタルジックに語られる過去となりつつあるが、バブルとその崩壊がもたらした社会の大きな変容は今もってグローバルな市場原理を加速度的に推し進めており、そんななか、「写真とは何か」もまた問われているようだ。

<作者のプロフィール>
浜 昇(ハマ ノボル)
1946年東京生まれ。75年ワークショップ東松照明教室入塾。76年自主ギャラリーPUT設立に参加。87年写真公園林設立。
写真展に、77年「今日の写真展・77」(神奈川県民ギャラリー)、79年「ぬじゅんin 沖縄・大和」(那覇ダイナハ)、95年、戦後50年展「GROUND 0」(沖縄県民ギャラリー)、2002年、琉球烈像展「沖縄という名」、07年「写真0年・沖縄」(以上、那覇市民ギャラリー)などがあり、写真集に、『フロムスクラッチ』(90年刊)、『VACANT LAND 1989』(2007年刊)などがある。

http://www.nikon-image.com/jpn/activity/salon/exhibition/2008/06_ginza-1.htm

第10回ディジタルコンテンツ研究会のお知らせ

第10回ディジタルコンテンツ学研究会を開催します。

日時  6月21日(土)午前10時から正午まで
場所  秋葉原ダイビル6F 明治大学サテライトキャンパス
    http://www.meiji.ac.jp/akiba_sc/outline/map.html
ゲスト 阿部和広さん(サイバー大学)
主催  理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系

「パーソナルコンピュータと初等教育 歴史・思想・現状」

今回のディジタルコンテンツ学研究会では、サイバー大学客員教授の阿
部和広さんをお招きし、One Laptop Per Child を中心として、
パーソナルコンピュータが世界の初等教育をいかに変えつつあるかにつ
いてお話いただきます。グローバル化と情報技術の関係を根底的に考え
るためにも、ぜひおさえておきたいポイント。お誘い合わせの上、お気
軽にご参加ください。

Tuesday, May 27, 2008

辺見庸によるマリオ・ジャコメリ

しばらく前に東京都写真美術館で見たマリオ・ジャコメリの写真は気にかかっていたのだが、それが親密な質をもっていると同時にとてつもなく遠い気もしていた。中世ヨーロッパのイコンに感じるのと同質の「遠近」に圧されて、語る言葉を見出すのが難しい。日曜日、辺見庸がジャコメリを現在の課題を交えて見事に語っているのを偶然見た。NHK教育テレビ・新日曜美術館でのことで、日曜夜9時のテレビではありえない過激な内容だった。そこではジャコメリの写真との比較においてテレビ自体が否定される。明るく可視化される技術と論理が否定される。司会者は全く登場せず、辺見の語りとジャコメリの写真だけが互いに屹立・交替して展開していく内容は、穏健な趣味に奉仕するこの番組の中では異例だ。小説家や詩人がこぞって写真について語った30-40年前に比して、「文芸批評としての写真論」が退潮したいまははたして、写真の表現にとって良きコトバの時代と言えるのか。自戒を込めてそう思った。

Sunday, May 25, 2008

Vernacular・山羊の肺・The Investigation

金曜日の午後、京橋のINAXギャラリーで石川直樹「Vernacular 世界の片隅から」展を見る。この着眼は貴重なものだ。ウォーカー・エヴァンズがモダニズムの洗礼を受けてパリから帰国した後、前衛主義の表現的な語彙から離れるために選んだ主題が、アメリカの土着的で無名の建築だった。白川郷の写真がベナンやフランスのヴァナキュラーな建築の写真に並置されるのがいい。20世紀の終わりから21世紀の始まりの瞬間をそこで迎えたことを思い出した。そして銀座のニコン・サロンで平敷兼七「山羊の肺」展を見る。ただ深く感動。遅ればせながら写真集を買うが、これもすばらしい。夜、横浜Bankart NYKに移動し、大虐殺を経験したルワンダの演出家ドルシー・ルガンバと劇団ウルヴィントーレの俳優たちによる、来日公演「The Investigation」を観る。原作ペーター・ヴァイスによるホロコーストをめぐる証言が繰り広げられる法廷劇。シンプルな装置と衣装、強固な物語性、洗練された演出、身体的な現前の力、そして時折発せられる声量あふれるヴォーカルなど概ね魅力的だったのだが、その「面白さ」にいささか躓いた。いくつかの問いがわだかまった。いったい出来事は劇に転化されうるか。そうならばそれが許されるのは、いかなる方途と回路を経てのことなのか。

Thursday, May 22, 2008

ティルマンスと風景、メモ

いつもすべきこと、新たにすべきことが待ちかまえ、ほんとうはもうしていなければならないことに急き立てられて暮らしているけれど、助成金をもらっていたある財団への論文提出がようやく終わったし天気も良かったので、昨日は見なければならないと思っていた個展のうちの半分ぐらいを見に出かけた。清澄白河の小山登美夫ギャラリーで川島秀明(絵画)、同じビルのタカイシイギャラリーで畠山直哉(写真)、中野へ移動してギャラリー冬青で原美樹子(写真)、初台のワコウ・ワークス・オヴ・アートでヴォルフガング・ティルマンス(写真)。いっぺんに多くを登録することが困難な目と脳に負荷がかかりすぎた。ティルマンスの写真はいつも、風景の所有とコレクションに関わる。(色面の印画紙の抽象作品も風景に見える)。だから、ほんとうはおそろしく典型的に「モダン」な制度に拘束されているはずなのだが、それに対する自己言及が付加され、しかも所有とコレクションを他所へ向けてリリースしようとする(それは擬態であるか否か?)。つかのまの保持だから写真という媒材が選ばれるのか。しかし分厚い西洋の視覚表現の歴史のなかに、一見、融通無碍なたたずまいのアーティストがいることは確からしく思えた。

Tuesday, May 13, 2008

「秦如美写真展 日常」のお知らせ

東京写真月間を構成する一つの写真展として、私が企画した以下の展覧会が来週から始まります。ぜひ見に来て下さい。

秦如美写真展 日常
Chin Yomi: Everydayness
−東京写真月間2008 倉石信乃企画−

会期:2008年5月19日(月)〜31日(土) 日曜休
12:00〜19:00(最終日は17:00まで)
会場:表参道画廊
東京都渋谷区神宮前4-17-3アーク・アトリウムB02
TEL/FAX:03・5775・2469
E-mail: info@omotesando-garo.com
http://www.omotesando-garo.com/
※オープニング・パーティー 5月24日(土)18:00〜20:00

日常にまつわる心の働きには「期待」がある。期待とは差異のことだ。時の移行のなかに定常的であることが期待され、定常的な時のなかに移行が期待される。このずれにおいてもう一つの心理、「不安」が到来する。不安によって日常は、安んじて帰還できる手軽な楽園とみなされ、いまここではない「いつかどこか」を呼び寄せるため の祈禱所となる。こうして日常は期待と不安のサーキットを形成する。しかし秦如美の写真が伝えているのは、そんなサーキットの心理学ではない。そうではなくサーキットの周囲にある、逃げ場のない、直面する物理的な心の震えである。震えているのは「この私」ではなく「周囲の事物」であり、その中に「私という物」もある。
              倉石信乃(批評家・明治大学大学院准教授)


作家略歴
1964年東京生まれ。1992年朝鮮新報社写真部に入社、退社後フリーランスの写真家と なる。2002年東京綜合写真専門学校研究科卒業。同年、写真集『月の棲家』(冬青社) を刊行、また新宿ニコンサロンで個展開催。2004-5年国際交流基金主催・笠原美智子キュレーションによる国際巡回展「アウト・オヴ・オーディナリー」展に出品。現在、東京在住。

Saturday, May 10, 2008

photographers' gallery press no.7

発売して間もない『photographers' gallery press no.7』に「報道と前衛−戦時下の瀧口修造」(51-61頁)を書きました。書いているとき、瀧口が1939年をピークとするわずか数年間に遺した、凄まじい数の写真に関する論文・エッセー・翻訳的紹介に圧倒されました。しかもどれも書き流してはいない。写真というものが何よりも増して、価値とか希望に結びいていたのかもしれません。今回の「press」は写真史家のジェフリー・バッチェンを特集するなど、とても読みごたえのある記事が多いのですが、忘れてはならないのは、フォトグラファーズ・ギャラリーのメンバーの写真家たち、高橋万里子、笹岡啓子、王子直紀、大友真志のグラビア頁です。見事なものだと思いました。

『photographers' gallery press no.7』の詳細は次のHPから。
http://www.pg-web.net/

Thursday, May 8, 2008

Gallery Zero開廊+第9回 ディジタルコンテンツ学研究会

明治大学生田図書館にGallery Zeroが出来ました。殺風景なコピー室をギャラリーに改装するに当たっては、副館長の浜口稔教授−言語思想と沖縄研究がご専門−の熱意にいつの間にか巻き込まれて、少しお手伝いをしました。小さいけれど意外に天井が高く、前室の開放的なスペースも併せてうまく使えば、面白い企画展が可能になる気がします。据え付けの高輝度のプロジェクター2台などを備え、映像作品の展示や、小規模のレクチャー等にも対応できます。記念すべき第1回の企画展は、メディアアーティストの迎山和司さんと、私たちの同僚宮下芳明さんのコラボレーションによる「Flowers:the interactive pictures」 です。また展示に併せて迎山さんをゲストに第9回 ディジタルコンテンツ学研究会を開催します。ぜひご参加下さい。企画の詳細は次の通りです。

明治大学生田図書館「Gallery Zero」オープニング記念展
「Flowers:the interactive pictures」
迎山和司(映像)+宮下芳明(音響)

2008年05月12日[月]-06月06日[金]
開館時間 | 平日 8:30-22:00 / 土 8:30-19:00 / 日・祝 10:00-17:00

この作品は映像画面のまえに鑑賞者がたつと花が咲くというメディアアート作品です。花は定点撮影で撮られた実写映像で植物の時間の流れを体験できるようになっております。また音響においては、植物DNAにおける開花促進遺伝子の配列を可聴化し、「ヒラケハナ」というメッセージを聞くことができるようにしております。

チラシ/地図
http://www.dc-meiji.jp/flowers.pdf


第9回 ディジタルコンテンツ学研究会のお知らせ

日時  5月12日(月)14時〜15時半
場所  生田キャンパス 中央校舎 5F メディアホール
ゲスト 迎山和司(公立はこだて未来大学 准教授)
ホスト 宮下芳明(理工学研究科 新領域創造専攻DC系 専任講師)

「Flowers: the interactive picturesの裏側 / 直感的コンピュータインタラクション」

明治大学生田図書館に新しくオープンした「Gallery Zero」で展示されるメディアアート作品「Flowers: the interactive pictures」。このディジタルコンテンツ研究会では、この作品を支える技術や、直感的なコンピュータ・インタラクションを効果的に見せることについて講演していただきます。

Tuesday, April 29, 2008

およそ4000のスナップ

横浜美術館アートギャラリーで5月7日(水)まで開催中の「日本のファッション 写真とイラストでたどる昭和・平成のおしゃれ」を金曜日に見ました。1950年代から現在までのストリート・ファッションの変遷を、イラストのカットアウト約120点と約4000枚の写真でたどるもので、見ごたえがありました。もちろん自分の若い頃のファッションを懐かしく思い出すこともできますが、複数のアーカイヴから抽出されたドキュメントによって構成されたこの展覧会は、スナップショットという、欲望や好奇心に支えられたまなざしの本来性をよく伝えています。共立女子短期大学と横浜美術館との連携が非常にうまく機能した事例だと思います。

Thursday, April 10, 2008

太田省吾の仕事−未来への応答

現在発売中の『舞台芸術』(特集=太田省吾の仕事−未来への応答)第13号に、「失楽園再訪−太田省吾『乗合自動車の上の九つの情景』を読む」(62-72頁)を寄稿しました。昨年亡くなった劇作家・演出家の太田省吾の「戯曲」のなかでも、最初期の作品について書いたものです。「乗合自動車の上の九つの情景」は、後にユニークな「沈黙劇」を作っていった太田省吾の原点の一つに、折しも返還直前の「沖縄」への強い想いがあったことを示す作品です。
私が継続的に近年、演劇のカンパニーARICAで上演のためのテクストを書いているきっかけには、80年代に集中して見た太田省吾率いる転形劇場の作品から受けた強い衝撃があります。当時のいわゆる小劇場ブームにはあまり乗れませんでしたが、太田省吾と転形劇場の素晴らしい役者たちの作り上げる舞台には、演劇は苦手なはずなのに実際のめり込んでいきました。今回彼の演劇論集をまとめて読んでみて、極めてポレミックなことに驚きました。

Wednesday, April 9, 2008

ディジタルコンテンツ系のスタート

きょうは、この4月にスタートする明治大学大学院理工学研究科ディジタルコンテンツ系(修士課程)の学生諸君13名、専任で指導に当たる管啓次郎さん、宮下芳明さんとともに、日頃使用することになる共同研究室に机、椅子、機材を急ぎ整え、最初の本格的なミーティング。それぞれが長く自己紹介と質疑応答を行なった。途中、生田の中華料理店に移動してミーティングは続いた。なかなか個性的な顔ぶれが揃った。これまでとはカルチャーの違う、新しい仲間たちとの出会いをうまく活かして、面白い研究と実践を重ねて行ければいい。私も便乗して新しい何かを制作するためのスキルを習得したいと思う。

Saturday, March 22, 2008

スナップショットの現在

『日本カメラ』2008年4月号の北島敬三さんの連載「SNAPSHOTS」最終回の余白に、「スナップショット・ポリティクス」(94-95頁)というタイトルの文章を寄稿しました。カメラの機動性が重視され始めた頃から登場したこの技法は、携帯カメラ、デシカメの普及したいまも盛んといえますが、反面、ストリートの真実を暴露するようなかつての生々しい衝撃力が希薄になっています。北島さんの連載は、現在の写真が喪ったものを明確に想起させる、とても挑発的な仕事でした。いま北島さんは新宿のphotographers'galleryで個展「PORTRAITS 1992-2007」を4月30日(水)まで開催中で、こちらも必見です。

http://www.pg-web.net/home/current/current.html

Wednesday, February 27, 2008

不可能コンテンツの挑戦

3月5日(水)、「アキバテクノクラブ」のイベントに合わせて、秋葉原駅・電気街口を出てすぐにあるダイビル6階の明治大学サテライトキャンパスでは、大学院理工学研究科新領域創造専攻のシンポジウムを三本立てで行ないます。

http://www.dc-meiji.jp/akiba/


安全学系、数理ビジネス系に続いて、私たちのディジタルコンテンツ系のシンポジウム「不可能コンテンツの挑戦」は、15:00から始まります。

「不可能コンテンツの挑戦」とは面白いテーマだと思います。例えばアートとの関連に限っても、かつてのエッシャーの版画のようなヴィジョンから、いま構想されている「コンテンツ」がどれだけ遠くに来ているのか、など新しい知見に触れることも出来そうだし、色々なヒントが得られそうです。ぜひ見に来ていただければと思います。

Sunday, February 24, 2008

写真ゲーム

3月8日(土)午後3時から、川崎市市民ミュージアムで開催中の展覧会「写真ゲーム」の関連イベント「ミニ・トーク」でお話しをすることになりました。30分ほどの短い時間です。
http://www.kawasaki-museum.jp/magazine/blog/exv/cat1/blog/383.html
川崎市市民ミュージアム http://www.kawasaki-museum.jp/

11人の写真家・アーティストが参加するこの企画展は、市民ミュージアムが長年開催してきた「現代写真の母型」のシリーズの一環です。このシリーズ展は、現代写真もしくは美術を考えるのに必要な見取り図を与えてくれる機会となってきました。写真と事実との結びつきを重視するなら、今回のテーマ「写真ゲーム」は挑発的なものに映ります。ゲームに必要なものはいつもルールとマナーだから、どのような新しいものが見られるか楽しみです。

Thursday, February 21, 2008

展覧会レビュー/桜へ

現在発売中の『アサヒカメラ』3月号に、「展評'08 「土田ヒロミのニッポン」展」(190-191頁)を寄稿しました。先日東京都写真美術館で土田さんとの公開トークに参加したことが書くに当たって参考になりました。ちなみに『アサヒカメラ』の特集はこの時期恒例の「桜」。リー・フリードランダーの桜と大森克己の桜の間には関連もあるけれど、やはり断絶のようなものがあるように感じます。今年の大岡川沿いの桜をこの目で確かめれば何か判るかもしれない。きょう隣家の梅が咲いて鶯が二羽とまっていたから、それはもうすぐ。

Sunday, February 17, 2008

東京芸術見本市2008

私の参加しているシアター・ユニットARICAが、東京芸術見本市2008(主催: 文化庁)のインターナショナル・ショーケースで短い作品「KIOSK Woman」を以下のとおり上演することになりましたので、お知らせします。

3月7日(金)16:30〜(予定) 恵比寿ザ・ガーデンルーム

東京芸術見本市2008 http://www.tpam.or.jp/japanese/inter.html
ARICA公式HP http://www.aricatheatercompany.com/

世界中の至るところにある、最小限のものを置いて売る店に着目した作品です。

Tuesday, January 29, 2008

EG Wordの終焉

昨日はちょっとショックだった。パソコンをはじめてもう長いが、ほぼ最初から使い続けてきたワープロソフトのEG Wordが販売を終了し、サポートも来年までという知らせが届いたからだ。EG Wordはわりと簡単な操作で感覚的に作業ができ扱いやすいかった。
http://www.ergo.co.jp

こういうのはありふれた事態だろう。マイナーなソフトが細々と生きながらえるほど斯界は甘くないのだろうが、しかしワープロソフトのような「手元」や生理に近く、思考の振幅を受け止めていくモノは多種多様なのが世の中にあふれていた方がよく、しかもファイル互換性も問題ないというのが理想だと思う。一つのフォーマットに収斂されていく作文機械とその頭脳という想定はありふれた悪夢だが、いまや現実に近いのかも。

Friday, January 25, 2008

ARICAのホームページ

写真や美術についての仕事と別に、以前から詩もしくは詩的なテキストを書いてきました。また2001年以降、シアター・ユニット「ARICA」の上演のためのテキストを書き、上演のコンセプトを考えることをつづけています。

ARICAの活動については、ホームページがリニューアルしつつあるので、こちらを時々のぞいてみてください。
http://www.aricatheatercompany.com/

来月には、ARICAがプロデュースする注目すべき公演「黒こげサンキュー」が実現することになりました。出演される首くくり栲象さんは、文字通り首つりを日課としているパフォーマーです。詳細は以下のとおりです。
http://www.aricatheatercompany.com/j/news/

ARICAプロデュース
首くくり栲象 Kubikukuri Takuzo
偶然★ワンマン★ショウ

黒焦げサンキュー

「不思議な偶然が重なって今回プロデュースすることになった首くくり栲象のアクションは、 どこか私たちARICAのスピリットと響きあっている、と思う」
藤田康城(ARICA演出)

出演:首くくり栲象

日時:2008年2月5日(火)→8日(金)8:00pm開演
9日(土)→11日(月・祝)6:00pm開演
(受付開始は開演の30分前より)

会場:神楽坂die pratze ディプラッツ
新宿区西五軒町 2-12
(地下鉄東西線「神楽坂」駅 1番出口より徒歩6分  有楽町線「江戸川橋」駅4番出口より徒歩10分)

料金:
一般/2,500円  
学生/1,500円(学生証をご提示ください)
※チケットは当日のみの販売です。
前売・予約での扱いはありません。開演前に直接会場にお越し下さい。

公演に関するお問合せ:
藤田康城 Tel. 090-9245-3724  aisuok@orange.plala.or.jp
前田圭蔵 Tel. 090-1446-0416 tarachan@fa2.so-net.ne.jp
安藤朋子 aa-tomoko@jcom.home.ne.jp

主催・制作:ARICA

首くくり栲象
1960年代の終わりから、路上、ギャラリー、劇場等、場所を問わずにさまざまなアクションを実践してきた。69年にはじめての首吊り行為を天井桟敷館でおこなう。以降、風倉匠、高松次郎、松澤宥ら美術家たちとの交流の中で、その表現を純化してきた。そして1997年より現在まで10年を越え、嵐の夜も吹雪の夜も、日々自宅の庭の椿の木で首を吊り続けるという孤高の行為を刻んでいる。2002年には東京バビロンでの劇場公演、翌03年からは、庭劇場で数人の観客を前にしてアクションを始めた。 今回はARICAの念願によって、1週間に渡る稀な劇場連続公演となる。

Sunday, January 20, 2008

澁谷征司『BIRTH』記念トークショー

2月2日(土)18:00〜20:00、青山のユニークな書店Book246のCAFE246テラスで、写真家の澁谷征司さんと対談することになりました。初の写真集『BIRTH』は、凄い勢いで写真集を作りつづけている赤々舎の新刊。近藤一弥さんが装丁をされています。近藤さんには、4月にスタートする私たちの明治大学大学院のディジタルコンテンツ系でデザインの授業を担当していただく予定です。

写真集はとてもfar outなたたずまいで、どこか懐かしい印象も受けました。かつて繰り返し聴いてたぶん無意識に影響を受けている(かもしれない)ロバート・ワイアットのポートレートが含まれているせいなのか。

イベントの詳細は以下をご覧下さい。
http://www.book246.com/item_special_f.html

また、澁谷征司さんのホームページも。
http://www.seijishibuya.com/

Tuesday, January 8, 2008

土田ヒロミのニッポン展「対談シリーズ」

東京都写真美術館で開催中の「土田ヒロミのニッポン」展を記念して、「土田ヒロミ対談シリーズ」が下記の日程で行われ、1月18日(土)の第一回目に参加することになりました。展覧会とイベントの概要は以下のとおりです。
http://www.syabi.com/details/tuchida.html

土田ヒロミのニッポン展
■会 期:2007年12月15日(土)→ 2008年2月20日(水)
※2007年12月28日(金) 10:00〜18:00
※2008年1月2日(水)〜4日(金)年始特別開館 11:00〜18:00
■休館日:毎週月曜日(休館日が祝日・振替休日の場合はその翌日)
■会 場:3階展示室
■料 金:一般 500(400)円/学生 400(320)円/中高生・65歳以上 250(200)円
※1月2日(水)は無料
※( )は20名以上の団体および上記カード会員割引
※小学生以下および障害者手帳をお持ちの方とその介護者は無料
※東京都写真美術館友の会会員は無料 ※第3水曜日は65歳以上無料

■Period: December 15,2007 to February 20,2008
■Closed Day:Monday(Tuesday if Monday is a national holiday)
■Venue:Exhibition Gallery, 3F
■Admission:Adults ¥500(400)/College Students ¥400(320)/High School and Junior Hight School Students, Over 65 ¥250(200)
※Admission is free of charge on January 2. ※The figure in parentheses refers to a group discount rate applicable to groups of 20 people or more. ※Admission is free of charge for disabled persons and their caretakers ※Admission is free of charge for members of the Tokyo Metropolitan Museum of Photography. ※Admission is free of charge for persons aged 65 or older on the third Wednesday of each month.

1960年代終わりから写真家として本格的な活動を開始した土田は、日本の土俗的な文化、ヒロシマ、高度経済成長、バブル経済などのテーマを通して、変貌する日本の姿を撮り続けています。土田の視点はつねにユニークで、作品ごとに明確なコンセプトを持ち、日本という国に対する問題意識を実験的ともいえるアプローチで表現してきました。「自己表現」と「徹底的な記録」の両面を行き来することで進化を遂げてきたこの作家の作品からは、社会性と時代性を背後に日本が抱える問題を汲み取ることができます。
この展覧会では東京都写真美術館が重点的にコレクションした土田作品に加え、最新作を含めた約140点で、氏の作家活動の軌跡を一堂に紹介します。混沌とした世相のなか、土田作品は日本と自己の関係を見直す何らかのヒントをくれることでしょう。

--- フロアレクチャー ---
会期中の第2・第4金曜日午後2時より担当学芸員による展示解説を行います。
展覧会チケットをお持ちの上、会場入口にお集まりください。
※12月28日(金)午後2時からのフロアレクチャーは土田氏もゲスト参加

--- 新春フロアレクチャー ---
出品作家と担当学芸員による年始特別展示解説
1月2日(水)、3日(木)両日午後2時〜、1月4日(金)午後1時〜

「土田ヒロミのニッポン」展関連イベント
「土田ヒロミ対談シリーズ」(仮称)開催決定!
○第1回:1月18日(金)午後6時〜8時 倉石信乃×土田ヒロミ
写真評論家の倉石氏をお迎えし、写真史をベースに土田作品を分析します。
○第2回:2月1日(金)午後6時〜8時 太田治子×土田ヒロミ
美術に造詣の深い作家の太田氏を迎え、作品を見て感じたことや抱いた思いを土田氏にぶつけていただきます。
○第3回:2月8日(金)午後6時〜8時 ピーター・バラカン×土田ヒロミ
70年代から日本在住で、異文化で活躍するバラカン氏に、、土田ヒロミの「ニッポン」と日本文化について掘り下げていただきます。
※募集方法等の詳細は、決まり次第、このホームページ内でお知らせ致します。

■主催:東京都 東京都写真美術館/産経新聞社
■協賛:日鉱金属株式会社/株式会社ニコン/ニコンカメラ販売株式会社/エプソン販売株式会社/
株式会社ポーラ/富士フイルムイメージング株式会社
■後援:サンケイスポーツ/夕刊フジ/フジサンケイビジネスアイ/iza!/SANKEI EXPRESS

◎土田ヒロミ氏の公式ホームページはこちら
→http://www.hiromi-t.com

Friday, January 4, 2008

『The Americans』再訪

あけましておめでとうございます。2008年がよい年でありますように。

年末の数日をニューヨークで過ごした。日本で近刊予定のロバート・フランクの写真集『THE AMERICANS, 81 contact sheets』(仮題)のために、写真家ご本人にインタヴューをした。83歳のマエストロは風邪をひいておられたが、長時間にわたりよくお付き合いいただいた。フランク氏は会うと「いまはまっている本」をいつも紹介してくださるが、今回はハイネ(の評伝)を読んでいた。他にパウル・ツェラン。

2008年は、フランクの写真集『The Americans』がフランスで最初に出版されてから50周年に当たる。『THE AMERICANS, 81 contact sheets』(仮題)は記念出版で、その出版元となる邑元舎のHPは次の通り。
http://www1.parkcity.ne.jp/nmoto/

2009年の1月からは、ワシントン・ナショナル・ギャラリーでコンタクト・プリント、ワーク・プリントを用いた個展を開催予定という。また近々、ドイツのシュタイドル社から1959年のアメリカ初版の体裁に基づく新装版『The Americans』が再刊される。少し小ぶりな版型でそれが新鮮だ。Amazonにもすでに載っている。

今年こそ少し時間をかけて、いまなお尽きせぬ魅力をもった写真集『The Americans』を見ていきたいと思う。