Sunday, May 25, 2008

Vernacular・山羊の肺・The Investigation

金曜日の午後、京橋のINAXギャラリーで石川直樹「Vernacular 世界の片隅から」展を見る。この着眼は貴重なものだ。ウォーカー・エヴァンズがモダニズムの洗礼を受けてパリから帰国した後、前衛主義の表現的な語彙から離れるために選んだ主題が、アメリカの土着的で無名の建築だった。白川郷の写真がベナンやフランスのヴァナキュラーな建築の写真に並置されるのがいい。20世紀の終わりから21世紀の始まりの瞬間をそこで迎えたことを思い出した。そして銀座のニコン・サロンで平敷兼七「山羊の肺」展を見る。ただ深く感動。遅ればせながら写真集を買うが、これもすばらしい。夜、横浜Bankart NYKに移動し、大虐殺を経験したルワンダの演出家ドルシー・ルガンバと劇団ウルヴィントーレの俳優たちによる、来日公演「The Investigation」を観る。原作ペーター・ヴァイスによるホロコーストをめぐる証言が繰り広げられる法廷劇。シンプルな装置と衣装、強固な物語性、洗練された演出、身体的な現前の力、そして時折発せられる声量あふれるヴォーカルなど概ね魅力的だったのだが、その「面白さ」にいささか躓いた。いくつかの問いがわだかまった。いったい出来事は劇に転化されうるか。そうならばそれが許されるのは、いかなる方途と回路を経てのことなのか。