12月2日(日)来年4月に開講する、明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻の発足記念シンポジウムが駿河台のアカデミー・ホールで行われた。当日参加してしてくださった方々には、心から御礼を申し上げます。
午前の第1部「安全学系」につづき、私が来年の授業を受け持つディジタルコンテンツ系のシンポジウムは午後の第2部から。前半は岩井俊雄さんのスペシャルトーク&ライヴが行われて、初心者にも簡単に演奏可能という、光と音のシンクロする電子楽器TENORI-ONの実演に触れることができた。TENORI-ONの開発プロセスも説明され、岩井さんらしいインタラクティヴな展示作品からの発展形として、「楽器」という形式に落とし込まれていった経緯が興味深かった。
後半のパネル討論に集った、岩井さん、初音ミクの開発担当者の佐々木渉さん、書道家の武田双雲さん、先進的でありながら明快なソフトの数々を送り出してきた平野友康さん、カリスマ的なゲーム制作者にして「元気ロケッツ」のプロデューサーの水口哲也さん、そしてコンテンツ制作の最先端を切り開きつつあるこれだけのメンバーを集めて、見事にシンポジウムを成功に導いた、第二部オーガナイザーの私たちの若き同僚、明治大学専任講師の宮下芳明さん。きわめて個性的な彼らにはみな、この時代に向けてより多くの人々にメッセージを伝えたいという強い熱意に溢れていたのだが、そうした熱意は、自らがクリエーターとして君臨するではなくて、むしろ多くの人ぴとの創造性を引き出す簡明なソフトやプラットホームを提供していくことにある。そのことが創造性という概念そのものの現在の変質、もしくは新規の成立と結びついているようだった。
とくに平野さんの発表の中に典型的に見られた、大企業の支配するコンピュータ・ソフト業界に対抗する意識の高さ、「心意気」は、いまのディジタルコンテンツを学問領域で考えていく上でも、最低綱領のようなものではないかと思ったもした。
とくに参加者の意欲の高い集まりにはつきものなのだが、クロストークに至る前に時間切れになってしまった。白熱した発言のそれぞれについて、さまざまな感想が切れ切れに浮かんできたのだが、裏方をしていた私ももっと聴きたかった。ぜひ再びそして継続的に、こうしたシンポジウムの場を作り上げられるようにしていきたいし、そうしなければならないだろう。