Monday, June 25, 2007

今年の慰霊の日に

6月23日(土)は慰霊の日。1945年、沖縄戦の終結したこの日に、沖縄在住の写真家・比嘉豊光さんの写真展「わったー 島クトゥバで語る戦世」を記念する対談に参加するため、沖縄・宜野湾にある佐喜真美術館を訪れた。私たちは、「写真にとって沖縄とは何か」という、余りにも巨大なテーマで話すことになった。冒頭で私は少し時間をもらって、1853-54年、ペリー提督率いるアメリカ艦隊に随行した写真家や素描家の記録したイメージをたどりながら、そこに認められるエキゾティシズムのまなざしと、1930-40年代の日本人写真家の来沖時における同質のイメージを比較・検討した。
対談の相手は、11月にできる沖縄県立美術館の学芸員翁長直樹さん。司会を写真家の北島敬三さんが担当。翁長さんは、私が横浜美術館の学芸員をしていたときに企画した「中平卓馬展」の沖縄巡回展を実現してくれた人で、沖縄の近現代美術史・写真史の第一人者だ。翁長さんは戦後に始まる沖縄人写真家の仕事を、わかりやすく解説してくれた。
第二部のセッションのテーマは「沖縄にとって写真とは何か」。パネルには写真家・批評家の仲里効さんの司会で、東京外国語大学の西谷修さん、沖縄大学の屋嘉比収さん、そして主役である比嘉豊光さんが登場。主に比嘉さんによる展示作品、つまり沖縄戦を「島クトゥバ」つまりウチナーグチ(沖縄のことば)で証言するおじいさんおばあさんたちのポートレートの意義について、議論が展開した。屋嘉比さんが、沖縄戦の写真のこれまでほとんどすべてが米軍側から提出される記録写真・映像であったことに触れ、「これは(沖縄からの)沖縄戦の写真である」と明確に定義されたのが心に残った。
このイヴェントはこれだけに終わらない。10月30日-11月4日には、那覇市民ギャラリーで、比嘉さんと、北島敬三さん・浜昇さんという東京在住の2人を加えた3人の写真家による、「写真0年沖縄」展が開催される。「写真0年沖縄」展は沖縄県立美術館の関連イヴェントとしても企画され、私は展示構成で参加する予定。詳しくは下記のホームページをご覧下さい。

http://zeronen.jugem.jp/

沖縄でモノを考えること、あるいはすでに沖縄に想いをめぐらせることは、日頃の私たちの暮らしている場所を相対化する得難い機会を提供してくれる。しかしそれをコトバにしていくことは余りに難しい。しかしアクチュアルな実践にかかわりながら、考えたり逡巡したりする時間が、私にとってはとても貴重なものになっている。