Sunday, June 10, 2007

子供時代=古代

共同通信社から依頼で、今橋映子さんの著書『ブラッサイ パリの越境者』の書評を書きました。
ゴールデンウィークの前後に、秋田魁新聞、静岡新聞、京都新聞、神戸新聞など10紙に掲載された模様。けさ掲載紙が届き、やっといつどこに載ったか判った次第です。載ってて良かった。
この本でとくに共感したのは、ブラッサイの写した「落書き」写真を重視しているところ。無名の通過者がストリートのかべに書いたり刻みつけたりした落書き、中でも低い位置に子供がつけた落書きをブラッサイは、「子供時代という<古代>」の洞窟壁画になぞらえています。現代の都市空間の「傷口」から古代を幻視すること。想像力の入口は至るところにあるはずだけど、なかなか気づきにくい。
ブラッサイの写真は、都市に途方もない時間の積層を見出すことがいまよりも可能だった、幸福な時代の産物だったのかもしれません。