例えば、沖縄と八戸を遠隔の飛び地と考えるのではなく、二つの場所が「地峡」のようにあるいは「橋」のようにつながり、地続きであると想定すること。そんな「よそ」を「ここ」へとつなげる想像力をテーマにした企画展、ダンス、映画上映が一度に見られるイベントの一つに参加しに、八戸市美術館を訪れた。企画したのは八戸のICANOFという市民の自発的なアート支援グループ。ICANOF第7企画展「ISMUS=地峡」展と題されたもので、2001年から続いている。
比嘉豊光の写真「島クトゥバで語る戦世」をメインとする美術館の展示に、伊藤二子の力強い抽象絵画と、ICANOFメンバーによるさまざまな写真作品が並ぶ。先週末には比嘉のビデオ版の「島クトゥバ」に加え、高嶺剛の劇映画、仲里効と港千尋のドキュメンタリー映画も上映された。また八戸を拠点に国際的な活躍をつづけるユニークなパフォーミング・アーツのユニット「モレキュラー・シアター」のメンバーによるダンス「イスミアン・ラプソディ」の連続公演も同じ会場で行われた。
9月15日(土)、港千尋監督の映画「チェンバレンの厨子甕」の上映後、港さんと、ICANOFのキュレーターで、モレキュラー・シアターの演出家でもある豊島重之さんと私の三人によるトーク・ショーが行われた。周知のように港さんは今年のヴェネツィア・ビエンナーレ日本館のコミッショナーでもあり、ちょうどイタリアから戻ったばかり。オックスフォード大学付属ビット・リヴァース博物館に陳列されていた、明治期に来日した言語学者チェンバレン旧蔵の厨子瓶を発見するところから、この映画は始まる。厨子瓶とは沖縄で死者の骨を納める容器のこと。「死者の扱い」をめぐるこの映画は、偶然の出会いがひとりでに積み重なってできあがるドラマのようで、とてもうらやましい感じがする。映画でなくてもいいけれど、こういうものをいつか作ってみたいと思わせる。
一つの作品が生まれるためには、他のさまざまな存在に備わっている「連結手」のようなものに絶えず触れていくことで、ようやく「完成」に至る。こんどはその作品がやがて生まれくる別の作品を誘発させる動因となる。そんな「リレー」のことを考えた。
ICANOFのホームページは次の通りです。
http://www.hi-net.ne.jp/icanof/