先週末の9月21日(金)の夜、個展開催中の写真家・石川直樹さんと、会場の銀座ニコンサロンで、「フォトセミナー」と称する公開トークを行いました。展覧会は、前にプログでも紹介した、世界の先史時代の壁画をめぐる旅の記録です。私の質問に石川さんがそれに答える形で話は進行しました。
写真を撮って現像・プリントし、写真集や展覧会を構成するという絶え間ないプロセスが、世界を理解していく上で不可欠だと石川さんは言い、カメラのない旅は考えられない、写真があって本当に良かったといま思えると言います。また、人知を超えた領域への接近を物語る、壁画という呪術的な表現に関連して、超常的なものや神秘的なものの実在を信じているかと訊くと、全く信じていないし、幽霊も見たことはない。ただ、現地の人たちにとってそういう次元がごく普通のこととしてあるということをよく理解する、という意味のことを石川さんが言っていたのがとても面白かったです。対話を通じて、石川直樹という写真家のタフで冷静な姿勢が浮かび上がりました。
展覧会に併せて、写真集『New Dimension』(赤々舎)が発売されます(個展会場で先行)。この本に、私は「ネガの手の叫びのために」というエッセイを寄稿しました。先にStudio Voiceに書いたのと同じタイトルですが、中身はかなり違ってずっと長いです。英訳をドキュメンタリー映画の監督としても有名なJohn Junkermanさんに担当していただきましたが、彼とのやりとりもこの暑い夏の貴重な記憶になりました。
展覧会は10月2日(火)まで。
写真集の情報は赤々舎のホームページから http://www.akaaka.com/