Thursday, July 12, 2007

追悼ジョン・シャーカウスキー

1962年から91年まで、実に30年にわたってニューヨーク近代美術館(MOMA)の写真部門のキュレーターを務めたジョン・シャーカウスキーが7月7日、マサチューセッツ州ピッツフィールドで亡くなった。81歳だった。彼は、ダイアン・アーバス、リー・フリードランダー、ゲリー・ウィノグランドを世に出した1967年の「ニュー・ドキュメンツ」展、写真家の志向性を、あえて主観性と客観性の比重によって「鏡」と「窓」に分類しながら、明快に現代写真の動向を整理した1978年の「鏡と窓」展など、写真芸術の方向を決定づけたり、現代写真を考察する上での見取り図を描くような、数々の重要な展覧会を企画した。今日のようにアジェの評価を高めたのも、彼の数ある業績の一つだった。私にとって印象深いのは、1989年に写真発明150年を記念した企画展「今日までの写真」で、直接展覧会を見ることは出来なかったが、その周到で個性的なカタログは美術館の学芸員になりたての私に、写真史的なパースペクティヴを与えてくれた。従来の写真史的な記述に比して、アノニマスなイメージと印刷媒体としての写真の重要性を強調したその書物は、学芸員がいかに通念から離れて自分を信じて展覧会に新たな知見を盛り込むかを教えてくれたし、いまでもしばしば参照している。今日、彼の推進したスナップショットや新しいドキュメンタリーのもつモダニズム的な価値は実際危機に瀕しているし、彼自身の美学にも疑念が呈されている。だが、シャーカウスキーの文章じたいの魅力は、私(たち)を含めた異議申し立てを試みる側の文章を逆に問いただしてくるものだ。晩年は、写真家としての活動がよく伝えられたものだった。『ニューヨーク・タイムス』が長い追悼記事を掲げている。
http://www.nytimes.com/2007/07/09/arts/09szarkowski.html