Wednesday, October 6, 2021

展覧会「あかしtestaments」青森県立美術館


 週末の10月9日から青森県立美術館ではじまる展覧会「東日本大震災10年 あかしtestaments」を李静和さん、高橋しげみさんと企画しました。

http://www.aomori-museum.jp/ja/exhibition/20211009/

https://bijutsutecho.com/magazine/news/promotion/24722

******************************************

キュレーターからのメッセージ

かつて生じたことで、歴史にとって、失われたと見なされるものは何ひとつない

― ヴァルター・ベンヤミン/『歴史の概念について』

東日本大震災から10年。甚大な被害をもたらしたあの災禍以降、被災地においては、将来の災害に備える社会基盤が次々と整えられ、被害の教訓を後世へ伝える数々の伝承施設が建設され、さらには「復興」を祝うイベントが開催されてきました。しかし、これらが達成される過程で、私たちは時に、被災地の現場からの声がかき消されてゆくのを目にすることになりました。震災という出来事は、一方で、まさにそのような「小さな声」に耳を傾けることの重要性を教えるものではなかったでしょうか。

周年記念日から半年以上を経た今、「東日本大震災10年」という言葉が既にどこか時機を逸したように響くほど、刻一刻とあの出来事が遠のいていく中で、封じ込められた叫びを知る私たちが、それらを救い出すために何ができるのか。このことを考えるために、4人のアーティストを招きました。北島敬三、コ・スンウク、豊島重之、山城知佳子。時代の趨勢から取りこぼされてゆくものに目を向けてきた彼らは、その姿勢の一貫性と純度において稀有なアーティストたちです。彼らの写真、映像、インスタレーションが、縄文時代の鼓動を伝える青森県立美術館の空間に広がる時、その作品の連鎖がともす「灯(あかし)」は、「小さな声」の「証(あかし)」となることでしょう。そしてその中に、私たちは一瞬目にするかもしれません。かつて生じたことを、何ひとつ失うことのないあの<歴史>の姿を。

(キュレーター: 李静和、倉石信乃、高橋しげみ)

******************************************

展覧会は来年1月23日まで。遠方にお住まいの方も、もし何か機会がありましたら、お出かけいただければ幸いです。