Wednesday, June 27, 2007

トヨダヒトシ スライド写真上映会

ニューヨーク在住の写真家、トヨダヒトシさんのスライド写真上映会を
下記の日程で開催します。とてもめずらしい機会ですので、ぜひご参加下さい。

7月3日(火)10時30分〜12時
明治大学生田キャンパス中央校舎6階メディアホールにて

明治大学理工学部の私が受け持つゼミの総合文化ゼミナール「写真集をつくる」
の時間を利用した特別講義ですが、どなたでもご参加いただけます。
ただ、スライド上映会という性質上、時間厳守でお願いいたします。途中入場はできません。

生田キャンパスは小田急線生田駅下車徒歩10分。あるいは向ケ丘遊園前駅下車タクシーで10分。

写真を発表する形式として、トヨダさんはスライド写真の投影(プロジェクション)に限っています。
印画紙を額に入れた展示形式や、写真集のような書籍のかたちとは違った、光の点滅によってつかのま浮かび上がっては消えてゆく
スライド写真の「時間」もまた、写真を見るもう一つのユニークな機会となることでしょう。

Monday, June 25, 2007

今年の慰霊の日に

6月23日(土)は慰霊の日。1945年、沖縄戦の終結したこの日に、沖縄在住の写真家・比嘉豊光さんの写真展「わったー 島クトゥバで語る戦世」を記念する対談に参加するため、沖縄・宜野湾にある佐喜真美術館を訪れた。私たちは、「写真にとって沖縄とは何か」という、余りにも巨大なテーマで話すことになった。冒頭で私は少し時間をもらって、1853-54年、ペリー提督率いるアメリカ艦隊に随行した写真家や素描家の記録したイメージをたどりながら、そこに認められるエキゾティシズムのまなざしと、1930-40年代の日本人写真家の来沖時における同質のイメージを比較・検討した。
対談の相手は、11月にできる沖縄県立美術館の学芸員翁長直樹さん。司会を写真家の北島敬三さんが担当。翁長さんは、私が横浜美術館の学芸員をしていたときに企画した「中平卓馬展」の沖縄巡回展を実現してくれた人で、沖縄の近現代美術史・写真史の第一人者だ。翁長さんは戦後に始まる沖縄人写真家の仕事を、わかりやすく解説してくれた。
第二部のセッションのテーマは「沖縄にとって写真とは何か」。パネルには写真家・批評家の仲里効さんの司会で、東京外国語大学の西谷修さん、沖縄大学の屋嘉比収さん、そして主役である比嘉豊光さんが登場。主に比嘉さんによる展示作品、つまり沖縄戦を「島クトゥバ」つまりウチナーグチ(沖縄のことば)で証言するおじいさんおばあさんたちのポートレートの意義について、議論が展開した。屋嘉比さんが、沖縄戦の写真のこれまでほとんどすべてが米軍側から提出される記録写真・映像であったことに触れ、「これは(沖縄からの)沖縄戦の写真である」と明確に定義されたのが心に残った。
このイヴェントはこれだけに終わらない。10月30日-11月4日には、那覇市民ギャラリーで、比嘉さんと、北島敬三さん・浜昇さんという東京在住の2人を加えた3人の写真家による、「写真0年沖縄」展が開催される。「写真0年沖縄」展は沖縄県立美術館の関連イヴェントとしても企画され、私は展示構成で参加する予定。詳しくは下記のホームページをご覧下さい。

http://zeronen.jugem.jp/

沖縄でモノを考えること、あるいはすでに沖縄に想いをめぐらせることは、日頃の私たちの暮らしている場所を相対化する得難い機会を提供してくれる。しかしそれをコトバにしていくことは余りに難しい。しかしアクチュアルな実践にかかわりながら、考えたり逡巡したりする時間が、私にとってはとても貴重なものになっている。

Monday, June 18, 2007

反編集的フィルム

6月17日(日)、「水の映画」上映会が横浜美術館で開催された。その最終プログラムは、詩人・吉増剛造の映画作品。スクリーンに投影される「水」にちなんだ自身の制作した映像を見ながら、舞台上に座った吉増剛造本人が、当の映画の中の自分のセリフを時として批判し、あるいは映画の音声をかき乱す音楽を流す。この際どい同時進行の、破壊的なパフォーマンスは、一種の映画批判、上演批判の試みとも受け取ることができる。

吉増の映画はすべての作業を一人で行う。また時間の経過に対して、不可逆的であること、つまり編集をほとんどしない「一発撮り」である点も、特筆すべきことかもしれない。あるいはそれは時間の経過とともにひとりでに編集されていって、撮影とともに完成する「自己編集的映画」、オートポイエーシスとしての映画というものか。

上映後、吉増さんと40分ほどの公開トークに参加しました。事前に言うべきことを少し用意していきましたが、あまり役立ちませんでした。ライヴの自発性によって、複製の反復的なあり方を攪乱し問いただすことが、「映画」の上映の意義の一つと考えるのが詩人の仕事であるならば、固定的な理屈はあまり役に立たないことでした。

Friday, June 15, 2007

第3回ディジタルコンテンツ学研究会のお知らせ

第3回ディジタルコンテンツ学研究会を開催いたしますので、ぜひご参加ください。

この研究会は、来年4月に予定されている、
明治大学大学院理工学研究科ディジタルコンテンツ系の
開設にあたり、「ディジタルコンテンツ学」をめぐる問題を多方面から考えるため、
担当教員である宮下芳明さん(ディジタルコンテンツ学)、
管啓次郎さん(文化詩学・批評理論)と、倉石が月例で主催しているものです。

ゲスト 徳井直生さん(国際メディア研究財団研究員)
日時 6月30日(土)午前10時から正午まで
場所 秋葉原ダイビル6F 明治大学サテライトキャンパス
http://www.meiji.ac.jp/akiba_sc/outline/map.html

徳井さんのプロフィール:
1976 年、石川県生まれ。2004年に「生成的ヒューマン=コンピュータインタラクションに関する研究」で東京大学工学系研究科で博士号を取得。対話型音楽システム 「Sonasphere 」を開発し、DJとしてもパフォーマンスや作品を発表。

2004-2005年にかけてはSonyコンピュータサイエンス研究所パリ客員研究員として、ネットワークを用いた音楽システムの研究開発を行なう。パリ国際大学都市レジデントアーティストを経て、現在は国際メディア研究財団研究員、および東京藝術大学/東京工芸大学/長岡造形大学非常勤講師をつとめておられます。

異言語間の偶然的音声連鎖で世界を探索するシステムPhonethica、および"An Artifact formerly known as Music"なる新しい音楽の享受システムを開発中。

第1回の赤間啓之さん、第2回の前田圭蔵さんにつづき、今回もまたきわめて刺激的なお話をうかがうことができると思います。

ダイビルは秋葉原駅電気街口前の高層ビル。迷うことはありません。
もし守衛さんに訊かれたら行き先を「明治大学サテライトキャンパス」と告げて、直接エレベーターで6階までお越し下さい。

Wednesday, June 13, 2007

とんぼは旅の道連れ

きょうは朝から新幹線に乗って名古屋まで行き、中京大学Cスクエアで開催中の尾仲浩二さんの個展「Dragonfly」を見ました。エプソンの「コットン」というインクジェット・プリント用の印画紙は、版画のようなテクスチャーをもっています。そんな質感まで含めて現代の「名所絵」を作ること、しかもぜんぜん名所じゃないところに。それは見事なものでした。

この尾仲さんの個展については、事前にイメージを見せてもらい、展覧会パンフレットにエッセイを書きました。展覧会情報と併せて下記をご覧下さい。

http://www.chukyo-u.ac.jp/c-square/2007/79/kaisetu.html

いつか尾仲浩二による「日本百景」とか、そんな決定版も見てみたい。

Sunday, June 10, 2007

子供時代=古代

共同通信社から依頼で、今橋映子さんの著書『ブラッサイ パリの越境者』の書評を書きました。
ゴールデンウィークの前後に、秋田魁新聞、静岡新聞、京都新聞、神戸新聞など10紙に掲載された模様。けさ掲載紙が届き、やっといつどこに載ったか判った次第です。載ってて良かった。
この本でとくに共感したのは、ブラッサイの写した「落書き」写真を重視しているところ。無名の通過者がストリートのかべに書いたり刻みつけたりした落書き、中でも低い位置に子供がつけた落書きをブラッサイは、「子供時代という<古代>」の洞窟壁画になぞらえています。現代の都市空間の「傷口」から古代を幻視すること。想像力の入口は至るところにあるはずだけど、なかなか気づきにくい。
ブラッサイの写真は、都市に途方もない時間の積層を見出すことがいまよりも可能だった、幸福な時代の産物だったのかもしれません。

Saturday, June 9, 2007

吉増剛造の水の映画、特集上映

6月は3週連続で、土日に公開トークをする月になってしまった。
話は得意じゃないけど、これも成り行きだから成り行きだと思えば多少は楽になる。

私の最も尊敬する詩人で、恩師でもある吉増剛造さんは、近年短編映画を撮影されている。
その多くは「水」をテーマにしていて、ちょっと衝撃的なほどにシンプルで
さりげなく、どれも素敵だ。一緒に隣で詩人と歩いているみたいな感じ。
吉増さんの詩の複雑な素晴らしさとは、また違う魅力がある。
ぜひ見てほしいものです。

私がこの3月まで勤めていた横浜美術館でいま開催中の展覧会、「水の情景」展の
関連事業の一環として、6月16日(土)・17日(日)の二日間、「水の映画会」が行われる。
17日(日)の午後4時から、最後のプログラムに吉増さんご本人も登場、
上映後のミニ・トークのホスト役を私が務めます。

横浜美術館のホームページに、もうすぐ詳しいプログラムが載る予定なので、
ぜひご確認下さい。

http://www.yaf.or.jp/yma/

担当学芸員の松永真太郎さんに確認したところ、今日中に載せるとのことです。

New Waves

ホンマタカシさんの写真展が東京・渋谷のパルコPart1、ロゴス・ギャラリーで始まった。
タイトルにある写真集を記念してのこと。明日6月10日(日)2時から、ホンマさん、写真家の長島有里枝さんと一緒に、
私も参加するトーク・ショーが展覧会場で行われる。

www.parco-art.com/web/logos/

波の写真はいま、多くの写真家が手がけている。ホンマタカシのそれは、あれらとどう違うのか。そのあたりをどう話そうかと思案している。