Friday, August 10, 2007

新しい次元

最新号の『スタジオ・ボイス』9月号(特集=新写真衝動 若手写真家たちのヴィジュアルバトル)、
pp.78-79に「ネガの手の叫びのために」を寄稿しました。
写真家・石川直樹さんの最新の連作「New Dimension」について
書いたものです。

この連作は、この6年ほどの間に石川さんが、世界中を飛び回って
先史時代の壁画を撮影した記録をまとめたもので、来月中旬には、
赤々舎から同名の写真集が出版予定。そして9月19日(水)〜10月2日(火)、
銀座・ニコンサロンで展覧会が開催されます。ぜひ見て欲しいと思います。

http://www.nikon-image.com/jpn/activity/salon/exhibition/2007/09_ginza-2.htm

旧石器時代後期までは遡る、途方もないスケールのテーマですが、
壁画との遭遇のプロセス全体を丁寧に捉え、壁画の周囲の環境にもまなざしを向ける
石川さんの写真は、肩に余分な力の入ったところがなくて、逆に、想像力を強くかき立てます。

Monday, August 6, 2007

故郷・美ら・思い

音楽については軽い立場がいいと思って、あまり集中しないことにしてすませてきた。もう10年ほど前になるだろうか、通勤途中だったか帰宅途中だったかも定かでない時刻に、横浜そごう前の雑然としたイベント・スペースで、奄美の物産が少し並んで、小さなステージがあって、いまも誰か思い出せない若い女性の歌手が、島唄を唄っていた。ききながら、私は激しい衝撃を受けて立ちつくしたのだったが、先を急いでいてパフォーマンスのすべてを聴くことが出来なかった。それからことあるごとに、奄美のウタがきこえてくるたびにはきいていたのだが、CDを買うことはしなかった。音楽については軽い立場がいいと思っていたから、いたずらに受動的なのだった。

しばらく前に日本民謡フェスティバルのグランプリをとった中村瑞希の「やちゃ坊節」をテレビで見ていて、素晴らしかったので、ついにCDを買うことに決めたのが、ようやく1と月前のこと、ついでに元ちとせがメジャー・デビューする前に出した、島唄のCD「故郷・美ら・思い」を併せて、同じ奄美のレコード会社「セントラル楽器」から通販で買うことにした。

きいてみて、中村瑞希も良かったのだが、民謡歌手時代の元ちとせは凄まじかった。短い一曲の時間の中でも、何かがとりついて渦を巻き、歴史の厚みが一挙に出現するあの民謡に固有の感覚は一体なんなんだろうか。わたしはどこに連れて行かれるのだろうか。このうたうたいは、まだ10代だったのだろうか、そんなことは全然関係がない。

この夏は、元ちとせの島唄をきいただけでも、もう充分にいい夏だ。通販万歳、セントラル楽器ありがとう ! ぜんぜんビジネスライクじゃないこの会社。
http://www.simauta.net/